パク・リノ『お絵かきチュートリアル』をやった
3行でまとめ
補足
きちんと教本を一冊やりきろうと思いやってみたが、なかなか良かったのでレビューしたい。
- 作者:パク・リノ
- 発売日: 2019/02/21
- メディア: 大型本
良い点
本書は二部構成と言ってもよく、パーツごとの描き方を学ぶ前半部と、学んだことを生かしながら全体を描いていく後半部に大きく分けられる。
前半部は「楽に描く」ための美術解剖学のツボを押さえており、一般的な美術解剖学の教科書に進む前に押さえておいても良いだろう。特に腕橈骨筋や尺骨の描き方については目から鱗だった。
シワの考え方についても面白く、接触面と空いた部分で考えるという思考法はわかりやすい。慣れが必要な部分ではあるが、模写してみると発見があるだろう。この部分は苦手なので引き続き練習が必要だ。
自分は人外を描かない、描くつもりがないので飛ばしたが、人外についても記載が結構あるので人外を描く人はマストバイと言っても良いだろう。
良くない点
人によっては良いと捉える点であるが、癖のある画風がお手本として使われている。自分は絵柄が好きなので別に良かったが、嫌いな人もいるかもしれない。模写するとこんな感じになる。
正直「初心者」*1 向けだとは思わないのだが、これより難易度を下げてきちんと学べる本が思いつかないのも事実。
「チュートリアル」と銘打っているが「広く見る」という意識についてはあまり強調されていない。書籍の構成として、パーツの集合として人体を捉えるようにも見えてしまうため、初心者にありがちな「パーツのディテールから描いていく」癖は改まらない可能性がある。
よくあるアタリや立体をベースにした描き方が一切ハマらなかった人間なので、こういった描き方がハマる人であれば良いのだがハマらなかった人は別の方法を利用した方が良いだろう。ハマらなかった人向けの工夫を以下に記そう。
筆者の工夫
筆者は線でアタリを取れない人間である。正確には、「取れるが時間がかかる」と言ったほうがいいだろう。
そこで途中から、「シルエットでアタリをとる」という作戦に切り替えた。
手順としては下のなでしこを見て欲しい。だいたいこれで45分である。
グレーで塊感をとってラフを線画で作り、線を整えて色を乗せる。いわゆるグリザイユ画法っぽい感じだ。ちなみに最終形からシルエットを取ってきているのでかなり正確に取れているように見えるが、全くそんなことはない。とにかく修正を重ねている。手順はこうだ。
- 塊をグレーで描く(陰影はつけない)
- 線画をラフで描く
- 塊を修正する(陰影をつける場合もある)
- 線画を修正する
- 3と4を繰り返す
得意な人なら最初から陰影をつけられるが、筆者は苦手なのでまずは形をグレーで取って陰影は後から考える、それだけの話である。上手い人、目が良い人(そしてそういう人が教える立場に回る)ほど最初から完成度の高いものが出せるが、下手な人間は最初から完成度の高いものが出せるわけではない。何度も修正しながら質を上げていくことを練習すべきである。
ちなみに先ほどの腕橈骨筋を意識したマッチョは完全にグリザイユで描いている。練習すればできるものである。
どこからこの作戦をとるかは自由だが、後半部はこの作戦をとることでだいぶ捗った。
教本はちゃんとこなせ
今までなかなか教本を全部こなしてこなかったが、一冊やりきると達成感もあるし力がつく。今更すぎるがこの考えは大事にしたい。
練習のマインドセットについては、別に記事を書きたいと思う。
*1:当ブログでは初期画才の偏差値が40未満の人間を指す